第2弾は、小児科医としてライソゾーム病を診療されている、独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター
(以下、岡山医療センター)の古城真秀子先生にインタビューさせていただきました。
ライソゾーム病を診療することになった経緯を詳しくお聞きしていきます。
独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター・小児科医の古城真秀子(ふるじょうまほこ)です。主に、先天性代謝異常症、小児内分泌疾患(※1)の診療を行っています。
※1 子ども特有のホルモンに関する病気
岡山医療センターでも、ライソゾーム病の治療「酵素補充療法」を行っています。
ただ、ライソゾーム病の症状は多岐にわたり、合併症を引き起こす可能性もあります。その場合は、基礎疾患となるライソゾーム病の治療を私が行い、循環器やほかの臓器の症状は、それぞれ診療科の先生にお願いするのが、私のスタンスです。その方が、患者さんにとって良い治療になると考えています。
また、「先天性代謝異常症」という分類の疾患は、小児科で診断することが多く、成人で疑わしい患者さんがいるときは内科の先生から相談を受け、必要であれば検査も行い、臨機応変に対応をしています。
そうです。先ほどもお話ししたように、先天性の病気は診断をするのに難しいと感じる先生がいることも事実です。この岡山医療センターでは、小児科の枠にとらわれず、それぞれ専門の医師が協力し合って、患者さんの治療を行っています。
特に、難病や希少疾患は、確定診断までに時間がかかり、さらに症状によって複数の病院を受診しなければいけないこともあります。その点、岡山医療センターは、院内でほかの診療科も受診できるので、患者さんが治療に専念できます。これが岡山医療センターの良い点だと感じています。
私は、もともと保育士になることが夢で、高校も文系に進学しました。高校生のとき、当時の進路指導の先生から「長い時間子供と接するなら、保育士より小児科医がいいよ」と助言をもらいました。その後、私の親も説得されてしまって、浪人生として大学受験をすることが許されました(笑)
ありがたいことに、高校卒業後も助言をくれた進路指導の先生が私のことを気にかけてくださいました。文系が得意だったので、受験科目に小論文のある大学を一緒に見つけてくれて、浜松医科大学に合格することができました。
中学生の夏休み、近所の児童養護施設のお手伝いをした経験があり、それがきっかけで子供と接する仕事に就きたいと考え始めました。
学生のときも「子供の成長と治療を近くで見守れる小児科医になりたい」と考えており、転勤がない病院を探していました。大学5年生の冬休み、就職活動の一環で、国立岡山病院(現在の岡山医療センター)の学生セミナーという行事に参加しました。学生セミナーでは、1週間泊まり込みで病院の仕事を見学することができます。病院内で様々な方と関わる中で、当時の部長から研修医のお誘いをいただきました。転勤や異動がない病院を探している中で、ご縁があってお誘いいただいたこともあり、国家試験合格後、研修医として就職しました。
就職した当時、国立岡山病院には、代謝で有名な医師が在籍しており、その先生の下で代謝疾患を中心に勉強していました。就職して間もない頃、尿素サイクル異常症という代謝疾患の子を診る機会がありました。この病気は、たんぱく質の摂取制限があるため、普段の生活や食事でも注意が必要です。実は、浪人生の時に栄養士の専門学校にこっそり通ってまして(笑)過去に取得していた栄養士の知識が、ここで役に立ちました!
この出来事で自分のやってきたことが、患者さんのためになり、とても嬉しくなりました。その患者さんは、現在、看護師として一緒に働いてくれています。
このような代謝疾患を診ている中で、ライソゾーム病の患者さんとも出会いました。
今から19年前くらいになりますかね。東京で「ムコ多糖症Ⅵ型(※2)」と診断を受け、治療のために岡山医療センターに来院された患者さんとご家族がいました。私が代謝を診療していたこと、さらに患者さんが岡山在住だったため、当院で治療をすることになりました。
当時、ムコ多糖症Ⅵ型の治療薬は、日本で発売・承認をされていませんでした。そのため、患者の親御さんが個人輸入で薬を手に入れている状況…時間もお金もかかり親御さんは大変だったと思います。
この状況を理解していた上司が、私に「事務的なことは私が行うので、患者さんの治療に専念して」と指示を出し、尚且つ関係各所へ働きかけてくださり、その半年後に日本でも治療を行うことが出来るようになりました。
※2 ライソゾーム病に含まれる疾患の1つ
※写真は、患者さんご本人・ご家族の了承を得て掲載しています。
こちらの写真はムコ多糖症Ⅱ型の患者さんです。
そうですね。ライソゾーム病広場に記載されている「早期発見の大切さ」は、この患者さんのお話です。兄妹の治療を行いましたが、早くに発見・治療を開始することで、予後が改善される可能性が高くなります。疑われる症状があった時は、できるだけ早く医療機関を受診してもらいたいです。
患者さんご本人「毎週、酵素補充の治療頑張っています!」
※写真は、患者さんご本人・ご家族の了承を得て掲載しています。
これまでのように見守ること、それと「患者さんが1人で辛くならないように気にかける」「些細なことに触れて会話を弾ませる」「外来に来た親御さんには必ず1回は笑ってもらう」など、患者さんとご家族への心配りを忘れずに患者さんと向き合っていきたいと思います。
※写真は、患者さんご本人・ご家族の了承を得て掲載しています。
ライソゾーム病は、以前よりも薬の開発が進んできています。
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〒701-1192 岡山県岡山市北区田益1711‐1
独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター
小児科 医長
古城 真秀子 先生
インタビュー・作成
一般財団法人 日本患者支援財団 運営事務局