ゴーシェ病 疾患情報
疾患情報
ゴーシェ病は、グルコセレブロシドと呼ばれる体内の糖脂質を分解する酵素であるグルコセレブロシダーゼ(β-グルコシダーゼ)の働きが弱い、あるいは酵素が存在しないために、グルコセレブロシドが細胞内に蓄積することで生じる遺伝病です。 特に肝臓や脾臓、また血液を作る工場でもある骨髄内にグルコセレブロシドが蓄積しやすく、そのために肝臓や脾臓が腫れる、骨折しやすい、貧血や止血ができない、けいれんなどの障害がみられます。 細胞のなかのライソゾームに蓄積される、ライソゾーム病の一種でもあります。

ゴーシェ病の症状

ゴーシェ病の症状は、グルコセレブロシダーゼの不足する程度によって異なっており、個人差があります。ただし、病状の経過と神経系の症状の有無に応じて、3つのタイプに分類されます。

1型(神経症状を伴わない)

肝臓や脾臓の腫大と骨の症状が中心で、幼児期から成人期に渡り、慢性に経過します。お腹が膨れる、脾臓が腫大することで赤血球や血小板が破壊され、また骨髄の機能が障害されることで、赤血球や血小板を作る機能も低下します。

そのため貧血、出血しやすい、出血がなかなか止まらないなどの症状も伴います。また骨が痛む、骨折しやすい、身長・体重の増加が遅れるなどの特徴もあります。日本人に一番多いタイプです。

ゴーシェ病の症状

2型(神経症状を伴い急速に進行する)

主に乳児期(生後3〜5か月)に発症、肝臓や脾臓の腫大のほか、けいれんや後弓反張(背中側を中心に弓形にそりかえる)などがみられます。また口が開けにくくなって嚥下や呼吸が困難となる、斜視、精神運動発達遅滞(発達の遅れ)もみられ、急速に進行して、多くが2〜3歳で亡くなります。

なお新生児期に発症する場合は、胎児水腫が(赤ちゃんの肺や腹部、全身に水が貯まる状態)や魚鱗癬(皮膚の角質が異常に厚くなり、魚の鱗のようになった状態)を伴うこともあります。

3型(神経症状を伴い緩徐に進行する)

乳幼児期に徐々に発症します。眼球運動の異常、小脳失調、けいれんなど、多様な神経症状を伴いますが、ゆっくりと進行します。いくつかのサブタイプに分けられ、肝臓や脾臓、肺などの臓器障害がメインとなる場合や臓器障害がほとんどみられない場合もあります。

発症の特徴

ゴーシェ病はまれな病気で、欧米では10万人に1人と言われています。日本では33万人に1人、全国で約150人の患者さんが、ゴーシェ病と診断を受けています。ゴーシェ病は、常染色体の異常に伴う遺伝性疾患であり、その発症に男女差はありません。

1型(神経症状を伴わない)、2型(神経症状を伴い急速に進行する)、3型(神経症状を伴い緩徐に進行する)の3つのタイプに分けられます。

1型と3型はゆっくりと進行しますが、3型の神経症状は遅れて出現することもあり、最初は1型だと思っていたら、実際は3型であったということもあります。ただその症状には個人差があり、また同様の症状を認める他の病気も多くあることから、診断することが難しい特徴があります。

なお2型は急速に進行し、残念ながら他のタイプに比べて長期に生存できないことが多いと言われています。

発症の特徴

ゴーシェ病の診断と治療

肝臓や脾臓の腫大、貧血や血小板の減少、また骨の症状を認める場合、ゴーシェ病が疑われます。ゴーシェ病の診断を目的とする検査には、主に次の検査があります。

血液検査グルコセレブロシダーゼ(β-グルコシターゼ)の 活性を測定する

まずはゴーシェ病が疑われる症状がある場合、血液検査で、グルコセレブロシダーゼの酵素活性を測定します。酵素活性が低い、あるいは酵素が不足していることで診断ができます。

組織検査:
骨髄の組織を採取し、ゴーシェ細胞と呼ばれる特徴的な細胞の有無を確認する
遺伝子検査:  グルコセレブロシダーゼの生成に関与する遺伝子の異常を確認する

なお補助的に骨のX線検査、またゴーシェ病で高値になることがわかっているアンギオテンシン変換酵素を調べることもあります。

ゴーシェ病の治療は、疾患の進行を抑制することが目的となります。

酵素補充療法

不足している酵素であるグルコセレブロシダーゼを点滴によって補充する治療法です。酵素を補充することで、不要なグルコセレブロシドが分解され、肝臓や脾臓の腫脹、貧血や骨の症状の改善などが期待できます。また病気の進行を遅らせることもできます。

基質合成抑制療法

グルコセレブロシドの蓄積を遅らせ、細胞内にグルコセレブロシドの蓄積を軽減させる治療法です。毎日薬を飲むことで、ゴーシェ病の進行を抑制することが期待できます。

造血幹細胞移植

多分化能をもつ細胞を移植し、グルコセレブロシダーゼを体内で作ることができるようにします。

早期発見の大切さ

ゴーシェ病は、ライソゾーム病の一種です。同じライソゾーム病の一種であるムコ多糖患症Ⅵ型では、5歳6か月と生後6週間から早期に治療(酵素補充療法)を開始した、兄妹の症例があります。

お兄さんは、2歳のとき言葉の遅れがみられていましたが、酵素補充療法を開始後、聴力の改善により言葉の遅れは全く認めず、精神運動発達は正常範囲で経過しています。また、妹さんも出生時にムコ多糖症Ⅵ型であることがわかり、生後6週間から治療を開始。治療開始後は、関節症状はほとんど認めず、聴力も正常範囲内を保てています。

ムコ多糖症Ⅵ型を含むライソゾーム病は、症状が出る前に診断をすることが非常に難しい病気です。しかし、早期発見、早期に治療を開始することで、今回のような長期の予後が改善された例もあります。また、現在では拡大スクリーニングの対象疾患となっており、実施している自治体も増えてきています。

出産の際はスクリーニングを受けたり、疑われる症状があった際は、早いタイミングで医療機関へ受診しましょう。

監修医:名古屋セントラル病院ライソゾーム病センター長、主任医長(科長) 坪井一哉 先生


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