ポンペ病の症状は、酸性グルコシダーゼの不足量によって異なっており、個人差があります。グリコーゲンが細胞内のライソゾームに蓄積すると、ライソゾームは拡張して空胞化します。それにより筋肉の収縮ができなくなり筋力低下が起きます。
早ければ、生後数か月頃から症状が現れ、急速に進行することもあります。具体的には、なかなか赤ちゃんの首が座らない、寝ている赤ちゃんの手足がだらんとして力が入らない(フロッピーインファント)、ミルクを飲む力が弱くてミルクを飲めない、呼吸をする筋力が弱いために呼吸が苦しくなるなどの症状がみられます。
また筋力が弱いためにお座りができない、歩行が困難などの発達の遅れ、ミルクがしっかり飲めないために体が大きくならないなど、成長の遅れも合わせてみられることもあります。
そのほかにも、心臓が肥大してしまうために心不全を起こしたり、痰を出す力も弱いために肺炎を起こしたりすることもあります。
小児期以降や成人してからポンペ病に気づかれることもあります。主に筋力が低下することで疲れやすい、運動するとすぐに息が切れるなどの症状があります。特に体幹に近い筋肉、つまり肩や太ももに筋力の低下がみられます。
さらに呼吸の力が弱いため、夜間に呼吸が一時的に止まってしまうこともあり、そのため夜間十分に眠れず、昼間に眠くなる、頭痛がするなどの症状がみられることもあります。
ポンペ病はまれな病気で、約10~20万人に1人と言われています。
また大人になって発症するタイプでは、診断がついていない場合も多くあると推測されています。およそ6割のポンペ病は、18歳以降になって発症するとも言われています。日本では、約80人のポンペ病の方がおられると報告されています。
ポンペ病は、2つのタイプに分けられます。
生後2か月から数が月以内に症状が現れ、急速に進行します。ミルクの飲みが悪い、体重が増えない、四肢の筋力が弱いなどから気づかれることが多く、心肥大、呼吸障害を伴い、治療しなければ1歳半までに多くの場合亡くなります。
生後1歳前後で発症する小児型と成人して発症する成人型があります。ゆっくりと進行するため、なかなか気づかれないこともありますが、発症年齢が低いほど、進行は早いと言われています。
主に運動能力の遅れ(歩行や階段を登ることが困難)、呼吸が苦しい、また進行する筋力低下などで気づかれます。最終的に、車椅子や人工呼吸器が必要となることもあります。
ポンペ病は、遺伝性疾患です。両親のうち一方がポンペ病であれば、子どもに遺伝する可能性があります。進行すると生命に関わることもあるため、早期発見・早期治療が重要です。
まずはポンペ病が疑われる筋力低下など症状や家族歴がある場合、また血液検査で筋肉内に存在するクレアチンキナーゼ(CK)や一部の筋肉を採取し、細胞内のグリコーゲンの蓄積状況を調べることもあります。また最近では血液を1~2mL採取して行う、スクリーニング検査を行うこともあります。
ポンペ病の診断を目的とする検査は、主に次の2つ実施されています。
血液や皮膚組織から、GAA酵素の働きを調べます。
GAA酵素を作る遺伝子 変異の検査
なおその他にも症状に応じて心臓の超音波検査、呼吸機能の検査なども行われます。
ポンペ病の治療は、疾患の進行を抑制することが目的となります。
不足している酵素であるGAAを補充し、病気の進行を抑える治療法です。グリコーゲンが蓄積しないように、点滴でGAA酵素を補います。なお点滴は、2週間に1回の頻度で行います。
また低下した筋力を高め、運動能力を維持、回復させるためのリハビリテーション、呼吸機能を高めるための運動、不足する栄養を補充するために、食べる力が弱っている場合は流動食を管を通して投与することもあります。
参考文献
ポンぺ病は、ライソゾーム病の一種です。同じライソゾーム病の一種であるムコ多糖患症Ⅵ型では、5歳6か月と生後6週間から早期に治療(酵素補充療法)を開始した、兄妹の症例があります。
お兄さんは、2歳のとき言葉の遅れがみられていましたが、酵素補充療法を開始後、聴力の改善により言葉の遅れは全く認めず、精神運動発達は正常範囲で経過しています。また、妹さんも出生時にムコ多糖症Ⅵ型であることがわかり、生後6週間から治療を開始。治療開始後は、関節症状はほとんど認めず、聴力も正常範囲内を保てています。
ムコ多糖症Ⅵ型を含むライソゾーム病は、症状が出る前に診断をすることが非常に難しい病気です。しかし、早期発見、早期に治療を開始することで、今回のような長期の予後が改善された例もあります。また、現在では拡大スクリーニングの対象疾患となっており、実施している自治体も増えてきています。
出産の際はスクリーニングを受けたり、疑われる症状があった際は、早いタイミングで医療機関へ受診しましょう。